ヴァイキングたちのラゴム

ヴァイキングたちのLagom

北欧のヴァイキングたちが、輪になって一杯の蜂蜜酒を飲む時、それぞれが自分のちょうどいい量だけ飲んで分け合ったという
Laget om(ラーゲット・オム)=仲間と分け合う“という言葉。それが“ラゴム”の語源と言われている。
みんなが同じ量になるように分配するのが平等だと思いこんでいた私には、ハッとさせられる話だった。
身体の大きさも、その時の気分も、人は皆それぞれ違っているのが当たり前。欲張らず、けれど我慢もしない。
すべてが「自分にちょうどいい」ことが、周りの人を幸せにし、居心地の良い場所を創り出す。
スウェーデンの人たちの明るい笑顔の根っこには、荒れ狂う海を仲間と乗り越える、屈強な男たちの美学が息づいている。

お気に入りたちとの時間

お気に入りたちとの時間

スウェーデンの家庭を訪ねると、彼らの空間コーディネートの上手さに驚かされる。
棚に飾られた写真や器、草花、旅の思い出の絵ハガキや切符、チケット…何の脈絡もないように見える一つひとつが、不思議とお互いに調和し合って、その人らしいストーリーを語り始める。「お気に入りを並べているだけ」。
そう話す彼らは、自分の気持ちを温めてくれる物たちに囲まれてなんとも心地よさそうだ。
トレンドでも他人の真似でもなく、自分らしさを確認するバランスの良い時間と空間…
それもまた、「自分にちょうどよい」を楽しむ、ラゴムな生き方なのかもしれない。

クリスマスは我が家で

私のミューシグって?

当たり前の、ちょっとした幸せをかみしめる大切な時間。クリスマスの季節には、そんな瞬間が溢れている。
大好きな家族が遠くから近くから集まり、穏やかに祝うスウェーデンのクリスマス。
派手なパーティーや賑やかで凝った演出はどちらかというとニューイヤーを迎える時のもので、
クリスマスは家族が豊かな時間を分かち合う、大切な時間だと言える。クリスマスツリーやキャンドル、テーブルに並ぶごちそうの匂い。
子どもの頃からの思い出が詰まった家族の風景は、華やかさはなくても、着慣れたコートのように、ちょうどよく心にフィットし、包み込んでくれる。

“家”が原点

私のミューシグって?

仕事や育児など、忙しい日常を過ごしているのはスウェーデンでも同じこと。
けれど彼らにはそのスピードを、緩めてくれる空間がある。「我が家」だ。
木の香り、ぬくもり、そしてあちらこちらに置かれた手作りの品、リメイクした家具、ヴィンテージの風合い…
時間をかけ、思いを詰め込んでそこにやってきたものを、彼らはとても大切にする。日々触れ合うものや目にするものはいつだって慎重に吟味し、
ラゴムな空間で長く愛しむスウェーデンの人々。 彼らにとって「我が家」は、自分らしさの原点なのだ。

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  • スロイド

    スロイド

    スウェーデン語【バネ・外に走り出る】
    18歳になると、スウェーデンでは成人の仲間入り。 6月に行われる高校の卒業式は、日本の成人式と同様に、明るいお祝いムードに包まれます。 卒業式はutspring(ウートゥスプリング:外に走り出る)と呼ばれ、社会へ飛び込んでいく第一歩。 「独り立ち」への喜びと大人になる緊張感を胸に、卒業生たちはお祭り騒ぎで街を凱旋します。

  • スロイド

    スロイド

    スウェーデン語【手仕事】
    長い冬、家の中で過ごす時間が多いスウェーデンで、家庭内で行われていた「ものづくり」を指す言葉がスロイド(手仕事)です。 生活用品や衣類、インテリア、おもちゃ…オートメーションが進み、大量生産の世の中になった今でも、 スウェーデンの人たちは「自分でつくる」ことを 愛してやみません。心を込めて、時間をかけて、誰かのために… ずっと愛せるものをつくり出すことは、彼らにとってかけがえのない喜びなのです。

  • ナチュール

    ナチュール

    スウェーデン語【自然】
    森と湖の国スウェーデン。
    人々は「自然と共に」そして「自分自身も自然体で」
    という思いを持って暮らしています。
    自然はみんなのものであり、土地所有者の許可なく
    自然の恩恵を共有できる「自然享受権」という
    独特な権利も認められています。
    生活の一部、生き方の基盤となるキーワードです。

  • ソンマルストゥーガ

    ソンマルストゥーガ

    スウェーデン語【サマーハウス】
    夏を過ごす家—— スウェーデンのサマーハウスは、
    日本の「別荘」とは少し様子が異なる。
    日常の喧騒から離れ、生活の場を自分たちで
    一つ一つ作り上げながら、自然の偉大さを感じ、
    日々の生活に深く感謝する。ここで過ごす夏の時間は、
    スウェーデンの人々の「生きる力」の源となっている。

  • フェンステル

    フェンステル

    スウェーデン語【窓】
    スウェーデンの人たちにとって、
    窓は単なる「開口部」ではない。 光あふれる短い夏と、暗く長い冬がめぐる暮らしの中で、窓は「太陽の入り口」となったのだ。
    個性豊かに飾られた窓辺は、道行く人の目も楽しませ、街を、そしてスウェーデンという国を
    美しく彩っている。

  • ラゴム

    ラゴム

    スウェーデン語【ちょうどよい・ほどほど】
    ex:ほどほどが一番
    ヴァイキングたちが一杯の蜂蜜酒を回し飲みする時に、
    それぞれが自分にちょうどよい量を飲んで分け合った
    “Laget om(ラーゲット・オム)=仲間と分け合う“
    という言葉が語源とも言われる。
    多すぎず、少なすぎず、自分に合った物や量を良しとするスウェーデンの哲学を表す言葉。

  • フィーカ

    フィーカ

    スウェーデン語【お茶の時間、お茶をする】
    ex:お茶にしませんか?
    スウェーデン独自のコーヒーブレイク。コーヒーを
    意味するKaffeがひっくり返ってFikaになったと
    言われている。コーヒーと一緒に軽いパンやお菓子
    がセットになることが多く、スウェーデンの人々が
    大事にしている、心を通わせ合う時間。もちろん一人
    でのフィーカもOK。

  • ミューシグ

    ミューシグ

    スウェーデン語【心地良い場所・空間・時間】
    ex:ああ、ミューシグだね。
    のんびりと、心地よい状態を指します。一人でも、
    親しい人と一緒でも、自分の気持ちに素直になって、
    心の底からリラックス。スウェーデンの人々が大切
    にしている、暮らしのキーワードです。

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