
気が付けば、スウェーデンハウスを建ててはや19年。オーナーコピーライターのひとりごと。

北欧の国々のように、長い長い、そして厳しい冬を経てたどり着く春ではないけれど、やはり春がくるのは嬉しい。仕事の手を止めて、窓の外に目をやる回数が俄然増える季節だ。別に何が見えるわけでもない。道路横の花壇に明るい色の花が咲き始め、その横を少し薄着になった子どもたちが走って行く。見た目はまだ冬のままの木々でさえ、春風に揺れて嬉しそうだ。風の匂いを確かめたくて、窓を少し開けてみる。
娘がまだ小さかった頃、折り込み広告の裏によく絵や手紙を書いていた。親バカと分かってはいるが、あまりに微笑ましいものは捨てられず、いくつかはお気に入りのフォトフレームや額縁に入れて、今もリビングの隅っこに掛けてある。私の小さな癒しコーナーだ。
何気ない落書きでもきれいな額に入れるとぐっと素敵に見える。額縁効果というやつなんだろう。スウェーデンハウスの木製窓もきっと同じだ。ぬくもり溢れる木の枠で大きく切り取られた風景は、美しければより美しく、ありふれたものでも魅力的に見せてくれる。遮音性が高いおかげで静かに眺めていられるのも、絵画鑑賞のような癒し効果を高めるのかもしれない。窓枠が違うだけでそんなに?と思われるかもしれないが、実際「そんなに」なのだ。
窓を設けるということは、壁に穴を開けることだ。室内で明るく過ごすためには、なるべく大きな窓が欲しくなる。けれど窓が大きすぎると壁の強度は下がるし、外の暑さや寒さも容易に入り込んでくる。ガラスが普及する前にはセキュリティの問題もあったはずだ。建築の歴史は窓の在り方との闘いだったと言ったのは誰だったろうか。それほど窓の役割は大きく、快適に暮らせる家になるかどうかは、窓次第だったということだ。昔も今も、家づくりのカギは窓が握っていると言っても過言ではない。
当たり前のように享受している窓のある生活。明るく、静かで、外の温度の影響を受けにくく、安心して暮らせる窓。なんて平和で、有難いことなのだろうか。春風の吹く中、あまりに心地よい景色を眺めながら改めて、唯一無二のこの窓と暮らす幸せをかみしめている。