私の小宇宙 絵・文 深井せつ子

昔の電話機は・・・

1990年代は、北欧の街や村で公衆電話を
探すのが大変だった。
ストックホルムにあったのは赤い
とんがり帽子の素敵な公衆電話。
形も美しく、見つけると嬉しかった。
子供たちも一緒に並ばせて
電話をかけた。

今はスマホの時代。LINE連絡、地図も
交通網も手の内で検索。
ひとり旅には最強の味方だ。

昨年、セーデルマルムの街を歩いていると、公園の端に赤いとんがり帽子が!
「な、なぜ?」
中を覗くと公衆電話機はなかった。
つまり昔の素敵な風景として、
ここに在るのだ。
なんという小意気な配慮。
別の場所で見かけた青いとんがり帽子の中には、たくさんの本が並んでいた。

そういえば、ダーラナにはあの風景に
最も似合う公衆電話があった。
木彫りの馬と同じ真っ赤に塗られ
模様まで独特の花柄模様だった。

Profile

深井せつ子
画家。北欧絵本に『イェータ運河を行く』、『風車がまわった!』、『森はみんなの保育園』、『スウェーデンの変身する家具』、他の地域の絵本に『一枚の布をぐるぐるぐる』など(全て福音館書店発行)。2021年4月に『児童文学の中の家』(エクスナレッジ)、2024年1月に『たくさんのふしぎ まど・窓・まど』(福音館書店)を出版。
https://www.instagram.com/setsukofukai/