
風が冷たい春のストックホルムを歩いていた時、
ある店のガラス越しに不思議な形の楽器を見つけた。
楽器店なら私は中に入っていただろう。
でも、そこは、銀食器やランプなどが並ぶ骨董屋だった。
ちょっと敷居が高い。
ジッと眺めるだけだった。
数年後、スウェーデン中部の村に滞在した時、
教会で古楽器の演奏会があると聞く。
さっそく出掛けて行った。
演奏会は、なんとあの楽器が中心!
ニッケルハルパという古楽器で14、5世紀頃に盛んに演奏されたらしい。
教会内部で聴く音色は、なんとも優しく、それでいて踊り出したくなるような楽しさもある。形といい、音といい、なんと不思議な楽器だろう。
再会出来た喜びと音色で、私は美しい夢の中を歩いている気持ちになった。
Profile
深井せつ子 画家。北欧各国の清涼な風景に魅かれ、北欧行を重ねながら、個展・出版等で作品の発表を続けている。北欧絵本に『イェータ運河を行く』、『風車がまわった!』、『森はみんなの保育園』、『スウェーデンの変身する家具』、他の地域の絵本に『一枚の布をぐるぐるぐる』など(全て福音館書店発行)。2021年4月に『児童文学の中の家』(エクスナレッジ)を刊行。 ▼www.setsukofukai.com