mjuk

Column from Sweden

北欧の暮らし

第69回
スウェーデン式、ラゴムの考え方

スウェーデンでは「ラゴム/lagom」という言葉をとてもよく耳にします。「ちょうどよい、ほどほど」という意味ですが、自分にとって「ちょうどよい」加減を意味しますので、人によってその加減は違ってきます。例えば食べ物を人数分に分ける場合、均等に分けるのではなく、お腹が空いている人には多く、そうでもない人には少なくといったように、その人にとってちょうどよい加減で分けることになります。他人と比較するのではなく、自分を主体にしてちょうどよい加減がわかってくると、世の中がとても生きやすくなるように感じます。なぜなら、物事の決定権が常に自分にあると、自分にとって居心地のいい暮らしができるからです。スウェーデン人の暮らしぶりから特にラゴムを感じるのは、彼らのおもてなしの仕方です。スーパーで売っているクッキーや板チョコを割ったものを、ちょっと素敵な器に盛ってフィーカのお菓子として出してくれたり、マグカップは普段使いのものであったりと、完璧なおもてなしではなく、いい意味で肩の力が抜けていて、まるで家族のように気楽にもてなしてくれます。日常のフィーカであれば手ぶらで訪ねますし、多少家が散らかっていても気にしません。そんなラゴムなおもてなしを受けると、自分も気軽に呼んでみようかな、という気になります。元々ラゴムはヴァイキング時代に食べ物や飲み物を分け合いながら生き抜いていた時の言葉といわれ、そのような伝統的な精神に自分だけが独り占めするなどという考えはありません。人々がそれぞれ自分のちょうどよい加減を知り、皆で分け合って暮らしていくという力強い考え方が根底にあるようです。

写真:手のかかっていないパンとサラダのラゴムなランチ

・・・・サスティナブルな暮らし・・・・

「サスティナブル」という言葉は、日本でも時々聞かれるようになりました。スウェーデンでは、さまざまな分野において重要なキーワードです。スウェーデン語では「ホルバール/Hållbar」と言い、直訳すると「持続可能な」という意味ですが、「自然環境に配慮する」という意味合いで使われることが多いようです。北欧では、環境や気候変動問題に対する市民の関心が高い傾向にあります。地球温暖化と気候変動の阻止を求める若き活動家である16歳のグレタ・トゥーンベリさんが世界的に注目され、日本でも話題になっています。スウェーデンの各地でも環境問題についてのセミナーや話し合いが行われています。最近の北欧デザインでも評価が高いのは、サスティナブルな商品です。インテリアフェアで選ばれる優秀デザイン賞では、このところアップサイクルなデザインがノミネートされるようになりました。「アップサイクル」とは、廃棄物を素材として利用し、ものの特徴を生かしてより良いものに作り変えることで付加価値を高めることをいいます。2019年の最優秀北欧デザイン賞に選ばれたのは、古いスカーフを再利用した「プリーツショール」です。リサイクル事業として25年の経験があるvan Deursというブランドが古いスカーフのデザインを組み合わせ、プリーツ加工した商品です。また、アップサイクルのデザイナーとして著名なマリールイス・ヘルグレンは、スウェーデンの家具の神様と呼ばれるカール・マルムステンの著名な椅子リッラ・オーランド(Lilla Åland)を製造する際に残る木屑を再利用したスツール、リッラ・スノーランド(Lilla Snåland)を作り出し、数々のデザイン賞を受賞しています。アップサイクルなデザインは今後ますます話題になっていくことでしょう。

写真:2019年1月のインテリアフェアFormexで最優秀北欧デザイン賞を受賞したvan Deursのプリーツショールは、リサイクルのスカーフを再利用したアイデア

・・・・Mysig/ あなたのミューシグを教えて下さい・・・・

ミューシグ/mysigとは、居心地のよい空間で気持ちが落ち着き、心からリラックスできることを表わすスウェーデン語の形容詞です。今回「あなたのミューシグ」をお聞きしたのは、南スウェーデンのルンドを拠点に活躍するテキスタイルデザイナーのユリア・ブリストゥルフ(Julia Bristulf)さんです。ユリアさんはスペインのマヨルカ島で家族とともに2年間暮らし、マヨルカの暮らしからインスピレーションを得たオリジナルのインテリア雑貨を展開しています。北欧と南欧を調和させたエキゾチックなオーガニックパターンが特徴です。そんなユリアさんのミューシグなシーンは、ルンドでの日々の暮らしや街角にあります。ルンドは色とりどりの家が立ち並ぶ小さな街で、街角にはこじんまりした、かわいらしいデザインショップがあります。お気に入りのショップに立ち寄ったり、ゆったりとした時間が流れる小さな街の様子を見るのもミューシグなひとときです。ミューシグなシーンはもちろん家の中にもあります。火を灯すと暖かい黄色に輝くキャンドルスタンドのあるテーブルと、座り心地のいい椅子。自分がデザインした大きめのクッションをいくつも置いたソファーのコーナー。キャンドルを灯し、ソファーにゆったりと座りながら温かいお茶をいただくひとときがもっともミューシグなのだそうです。

写真:南スウェーデン、ルンドの色とりどりの家並み

WEBサイト  http://www.juliabristulf.com/

山本由香(デザインコンサルタント)

ライター:山本由香(デザインコンサルタント)

1998年からスウェーデンのストックホルムに暮らす。2005年に「北欧スウェーデンの幸せになるデザイン」の出版を機に、ストックホルムにてswedenstyle社を起業。執筆や日瑞企業のコーディネートをはじめ、スウェーデンデザイン、文化を日本にソーシャルメディア等を使い広く発信中。

< 前の記事

次の記事 >