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Column from Sweden

北欧の暮らし

第66回
自然との共存

スウェーデンの国土の2/3を覆う森林の大部分は針葉樹で、そのうちモミの木が占める割合は41%、松は39%、そして12%が白樺で、残りはその他の広葉樹です。北部地方ではさらに針葉樹の割合が増え、見渡す限り松とモミの木の森が広がっています。
そんなスウェーデン北部の森の中に、宙に浮いたように存在する「ツリーホテル」があるのをご存知でしょうか?
人口わずか600人のHarads(ハーラッズ)という小さな村に、このホテルができたのは2008年、「Trädälskaren/トレードエルスカレン(ツリー愛好家)」という映画のために作られた建物を、取り壊さずに利用したのがきっかけだと言います。その後、建物を増やす計画をしていた頃、たまたま知り合った有名な建築家に設計を依頼したことからCNNの取材を受け、あっという間に世界中から注目を浴びる存在になりました。
ツリーホテルは木に直接建物を固定しているのではなく、地上から10メートルのところに特別な方法で設置されています。毎年木の成長に合わせて調整しているので、設置される松の木も地面も、そこに生える苔さえも傷つけないそうです。そしてホテルの利益の多くは森林の維持にあてられているという、自然を愛するスウェーデンならではの発想ですね。
家の庭やサマーハウスの木の上にはよく、板を継いで作られた「木の小屋 」を見かけます。これは子どもたちの秘密基地で、夏の間中ずっと過ごし、夜もそこで眠るほど大好きな場所。そんな子どもの頃の感覚を呼び起こす、贅沢な木の小屋「ツリーホテル」は、大人にとってもきっと特別な体験になるはず。私もいつか訪れてみたい場所のひとつです。

写真:地上10mに設置されたTree Hotel


ツリーハウスのHP
https://www.treehotel.se/en/

・・・・植物学者 Linnè(リンネ)・・・・

スウェーデンを代表する植物学者として知られるCarl von Linnè(カール・フォン・リンネ)は、「分類学の父」とも呼ばれ、後にダーウィンの進化論にも影響を与えたという偉大な人物。
植物を雄しべの数と大きさなどで分類し、それまでの説明的な文字が連なった複雑な学名をラテン語2語で簡素に記述する「二名法」という方法を確立しました。
動物も植物と同様に分類し、人類を「ホモ・サピエンス」と名付けたのも彼でした。
牧師だった父親から受けた影響は大きく、植物好きだった父親は庭にたくさんの植物を植え、幼いリンネと共にその中で多くの時間を過ごしたといいます。
自然科学に興味をもったリンネはルンド大学医学部に進学し、さらに知識を深めるため、当時ヨーロッパで最も権威ある高等教育機関であったウプサラ大学へと移り、めざましく才能を開花させていきました。
25歳の時には、当時は未知の土地であったラップランドを旅し、綿密に記録した生物のデータを残しました。それは後に、イギリスで出版される「ラップランド植物誌」の基礎となる重要な資料となりました。
その後ヨーロッパ大陸に渡ったリンネは、3年の間に8冊の書物を発表するほど植物学に没頭しました。
再びウプサラに戻った彼は、学生の指導にあたり、世界中に派遣した弟子たちから植物や動物の標本を収集したそうです。
鎖国時代の日本に渡り、1年間長崎に滞在したカール・トゥンベリーは、リンネの弟子のひとりと言われています。日本の蘭学者に多大な影響を与えた彼は「日本植物誌」を著し、「出島の三学者」のひとりと呼ばれていました。また在日中に収集した800種以上の植物の標本は現在もウプサラ大学に保管されているそうです。
偉大な功績を残したリンネは1757年、国王アドルフ・フレーデリックより貴族の称号を与えられました。

写真:リンネの肖像画


リンネにまつわる博物館や植物園などの施設
https://linnaeusuppsala.com/

・・・・自然を取り入れるインテリア・・・・

自然をこよなく愛し、自然と共存するスウェーデンの人たちは、普段から生活の中に上手に自然を取り入れます。例えばインテリアのファブリックに植物のモチーフを選んだり、樹木や葉っぱ、キノコなどが描かれた壁紙を貼ったりするのもそのひとつ。
ハンドプリントで有名な老舗「Jobbs(ヨブス)」や、インテリアショップ「Svenskt tenn(スヴェンスクト・テン)」ではテキスタイルだけでなく、小物類にも草花や野菜のモチーフをふんだんに使ったものが多く、常に人気となっています。陶磁器メーカーの「グスタフスベリ」でも、葉っぱの模様が描かれた「Berså/ベルサ」をはじめ、「Aster/アスター」や「Prunus/プルヌス(プラム)」など植物やフルーツの模様を施した食器は多くみられます。そして半世紀を経た現在も、その人気は衰えません。
またリビングやダイニングルームのテーブルコーディネートにも草花や木の実、石や流木など自然の中で見つけたモチーフをうまく組み合わせて、季節に応じてテーブルを華やかに彩ります。
このように、常に自然を身近に置く事で、心地よい「mysig(ミューシグ)」な空間を楽しむ習慣は、スウェーデン人の生活にしっかり根付いています。
たとえ都会で生活をしていても、見習いたいライフスタイルですね。

写真:ハンドプリントの老舗Jobbsの展覧会より

見瀬理恵子(イラストレーター)

ライター:見瀬理恵子(イラストレーター)

大阪総合デザイナー学院ファッションデザイン科卒。ペーター佐藤、安西水丸、原田治、新谷雅弘氏に師事。デザイン事務所勤務を経て、フリーランス・イラストレーターとして仕事を始める。1995年ー2000年と2006年から7年間スウェーデンに在住し、娘二人の成人を期に2013年9月に帰国。

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