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Column from Sweden

北欧の暮らし

第58回
スウェーデンのニューイヤー

除夜の鐘の音で明ける厳かな日本の新年とは違い、
スウェーデンでは大晦日に友人たちとカウントダウンパーティを開き、シャンパンで賑やかに新年を迎えます。
時計の針が0時を指すと、教会の鐘が鳴り響き、ストックホルムの王宮前では大きな花火が打ち上げられます。各地の広場や公園では夜が明けるまで花火を上げて大騒ぎをする人たちもいます。
スウェーデンのお正月には門松やしめ縄のようなお飾りはなく、クリスマスの飾りはそのまま、クリスマスから数えて20日目「Tjugondedag jul (シューゴンデダーグ・ユール)」と呼ばれる日まで飾っておきます。
日本ではあまり知られていませんが、クリスマスの飾りのひとつに「Mistletoe(ヤドリギ)」があります。冬の間も緑の葉と白い実を付ける枝は、古くから魔除けや縁起担ぎとして使われてきました。スウェーデンではヤドリギの枝の束を逆さにして玄関の扉の内側に吊るし、その下にいる女性にキスをする習慣があります。
西洋諸国に残るこの習慣は、ヤドリギが平和と友情のシンボルとされた北欧神話に由来するとも言われています。形や方法が違っていても、新しい年を健康で幸せに過ごせるようにと願うのは、どこの国でも同じようです。

写真:ヤドリギの枝の下のカップル


・・・・氷のホテル・・・・

北極圏にあるJukkasjärvi (ユッカスヤルビ)は、Ice Hotel(氷のホテル)がある地として知られています。
アイスホテルは世界中からアイデアを募集し、選ばれたアーティストの手によって毎年新しい氷と雪で建て替えられます。応募資格は特に定められておらず、誰もが参加できるところがなんともスウェーデンらしいです。
2018〜2019年は13カ国から選ばれた34名が、大自然からインスピレーションを得て「おとぎの国」を創り出しました。
アイスホテルは氷と雪で作られ、資源となる氷は近くを流れるTorne älv (トーネ川)から採取します。
3月にトーネ川から採った氷は11月まで冷凍貯蔵され、取り出された氷は2週間かけて新しいホテルに生まれ変わります。
ホテルには15の「氷の寝室」と結婚式のチャペルにも使用される「氷のセレモニーホール」や「アイスバー」などが造られます。「氷の寝室」の営業は11月から4月までの特定の期間に限定され、その後溶けた氷は再びトーネ河に戻されます。
アイスホテルには期間限定の「氷の寝室」の他に、1年を通して利用できる20室の「氷の部屋」と暖房付きの普通の客室が72室あり、多くの宿泊客は、滞在中の1日は氷の部屋で過ごし、後は通常の客室に泊まるそうです。
アイスホテルの「氷のチャペル」は日本でも話題になり、何度か取材されていましたが、今でもこの「氷のチャペル」で結婚式を挙げるカップルは後をたたないほどの人気ぶりです。
北極圏ならではの楽しみは、氷のホテルで過ごすだけでなく、真冬の大空で揺れ動く光のカーテン「オーロラ」の幻想的な世界や、その下の凍りついた大地を犬ぞりで走る体験など、この地でないとできない特別なものです。

写真:オーロラがみえるエントランス


こちらから画像が見られます
https://www.icehotel.com/sv/ice-galleries/

・・・・セムラが店頭に並ぶ日・・・・

スウェーデンには季節ごとの特別なお菓子がいくつかあります。
クリスマスの最後の行事が終わる1月中旬頃になると、パン屋の店頭には「セムラ」が並び始めます。「セムラ」はイースター前の断食に備えて食べる栄養満点の菓子パンで、本来は「Fettisdag/フェットティースダーグ(太っちょの火曜日)」と呼ばれる断食直前の火曜日にだけ食べるものでした。
1950年代に入ってからは、待ちきれない人のために「太っちょの火曜日」の1週間前から販売するようになりました。それからは年々売り始める日が早くなり、なんと1952年には1月にセムラを売り出した店に、早すぎるということで罰金が課せられたそうです。
「断食」という宗教的な習慣がなくなった今では、「セムラ」は多くの人に「春のお菓子」として捉えられています。ですから、規制がない今ではクリスマスが終わると早々に売り出す店もありますが、さすがにそれでは季節感が失われると、早すぎる販売に批判もあるようです。
宗教的な意味がなくなったとはいえ、イースターが終わるとピタッと店先から姿を消してしまうため、
店頭に並び始めるとついつい買ってしまうのが人の心理。昔からの習慣を大切にし、2月になるまでは絶対食べないという人がいる一方で、春の先取りを急ぐ人も少なくありません。
ちなみに2019年の「Fettisdag (太っちょの火曜日)」は3月5日、イースターは4月21日ですから、「セムラ」は4ヶ月間にわたりスウェーデン中で楽しまれます。

写真:セムラを食べる女の子

見瀬理恵子(イラストレーター)

ライター:見瀬理恵子(イラストレーター)

大阪総合デザイナー学院ファッションデザイン科卒。ペーター佐藤、安西水丸、原田治、新谷雅弘氏に師事。デザイン事務所勤務を経て、フリーランス・イラストレーターとして仕事を始める。1995年ー2000年と2006年から7年間スウェーデンに在住し、娘二人の成人を期に2013年9月に帰国。

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