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Column from Sweden

北欧の暮らし

第54回
世界で一番モダンな国?

数年前、スウェーデンで「世界一モダンな国」というタイトルで放送されたTV番組がありました。この番組はお国自慢ではなく、少し皮肉った面白い内容の番組でしたが、実際にスウェーデンは核家族、男女平等、ITの普及など、社会やライフスタイルがどこよりも早く変化してきた国かもしれません。
スウェーデンではすでに10年ほど前から、バスや電車のチケットが現金で支払えなくなっていましたが、2017年末スウェーデンを訪れた際には現金をほとんど使わなかった、というよりも使えなくなっており、キャッシュレス社会を実感しました。
さらに、スマートフォンのアプリで銀行口座間の送金もできるようになったので割り勘も簡単にでき、小銭を持ち歩く必要もなくなりました。最近は、街の有料トイレの支払いや街頭の共同募金までこのアプリで支払えるようになっていて、子どもたちのお小遣いまでが現金ではなくカードになっているそうです。
また、スーパーやデパートでは個人ナンバーで会員登録をするため、メンバーズカードを持っていなくても、ナンバーを伝えるだけでポイントが加算されたり特典を利用することができます。
個人ナンバーは日本でも「マイナンバー」として導入されましたが、実際に使用する機会はまだ少ないですね。スウェーデンでは1947年に導入されてから70年も経っているせいか、日々の生活にすっかり定着しています。
さらに驚くことには、ペットの首にはIDカード代わりのチップが埋め込まれており、人間の腕にも個人情報のはいったチップを埋め込む人もでてきたとか。
小国ならではの取り組みの速さなのか、合理的な国民性なのか、様々な分野において、やはり世界で一番モダンな国ではないかと思います。

写真:iZettleという会社のクレジットカード決済用カードリーダー レンタル可能なのでフリーマーケットなどの個人販売でも使える機械

・・・・合理的な国民性・・・・

普段の夕食を平均15分で作るスウェーデン人。「日本ではどうしてそんなに時間をかけて料理を作るの?」とよく聞かれますが、逆に「週末や夕食後にお菓子やケーキを作るスウェーデン人が多いのはどうしてなの?」と思うこともしばしばです。
スウェーデン人は合理性を重んじる国民だということは以前にもお話ししていますが、この国民性はお菓子作りのハードルも低くしました。
お菓子を作るとき、わざわざ材料の「重さ」を量るのが面倒という人は多いのではないでしょうか。日本ではあまり馴染みがありませんが、スウェーデンでは100mlを1デシリットルと表記し、計量カップ、食事用スプーン(大さじ)、ティースプーン(小さじ)、スパイススプーン(1ml)がセットになって売られています。1950年頃にこの計量カップとスプーンのセットが販売されてからまもなく、国民的クックブック「Vår kokbok」に初めてデシリットルのカップを使ったお菓子のレシピが紹介され、それ以来、このセットはスウェーデンのお菓子作りの基準となりました。どのレシピもカップとスプーンで「かさ」を量るだけで作ることができるので、とても手軽です。
今も日本でお米を量るときは1合180mlが使われていますが、スウェーデンの古い料理本を見ると、コーヒーカップ〇杯と表記されているレシピがあり、どこの国も身近にあるもので計量していたことが伺えますね。
材料を「重さ」でなく、「かさ」で量ると、多少グラム数は違ってきますが、私の経験上、ほとんど失敗したことがありません。何より簡単に作れる方が楽しいし、家庭で作るお菓子ですから、日によって少しぐらい味や見た目が違っていてもいいと思いませんか?

写真:普及しているデシリットルカップと計量スプーンのセット

・・・・日本と違う洗濯習慣・・・・

スウェーデンでは会話の中で、「今日は洗濯の日だから‥」という言葉をよく耳にします。洗濯の日ってお天気がいいから?と思ってしまうのは日本人。実はスウェーデンでは1週間に1度しか洗濯しない家庭がほとんどです。
集合住宅では必ず、無料で利用できる共同のランドリールームが地下にあったり、中庭に洗濯小屋が建っていたりします。ランドリールームには業務用の大きな洗濯機と乾燥機、そして乾燥室が設置されているため、大量の衣服やシーツを一度に洗えるのです。1930年代にスウェーデンは、当時ヨーロッパの中でも低かった生活基準を上げるために国が行った政策の一環で、国民の生活を楽にするための研究を行い、キッチンや洗濯室の基準を整えました。また、洗濯室は予約制になっていますが、急に洗濯の必要がある時も外出先からインターネットで予約ができるので、さほど困ることはありません。もちろん部屋に洗濯機を設置する人もいますが、大抵は一度に済ませたほうが合理的で経済的だと考えます。
戸建住宅の場合も多くは地下に広い洗濯室を設けて、長い冬に備えて大量の洗濯物を干せるようにしていますが、それでもやはり洗濯は週1回で済ませる人が多いそうです。
ほぼ毎日洗濯をするのが普通の日本では考えられない習慣ですね。

写真:集合住宅のランドリールーム

見瀬理恵子(イラストレーター)

ライター:見瀬理恵子(イラストレーター)

大阪総合デザイナー学院ファッションデザイン科卒。ペーター佐藤、安西水丸、原田治、新谷雅弘氏に師事。デザイン事務所勤務を経て、フリーランス・イラストレーターとして仕事を始める。1995年ー2000年と2006年から7年間スウェーデンに在住し、娘二人の成人を期に2013年9月に帰国。

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