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Column from Sweden

北欧の暮らし

第12回
スウェーデンの森にまつわる話

・・・・Allemansrätten(アッレマンスレッテン)自然享受権・・・・

スウェーデンでは、誰もが自由に自然を共有することができる「Allemansrätten(アッレマンスレッテン)」という権利があります。
そのためスウェーデンでは草原や森にも私有地を区切る柵などほとんど見かけません。
自然保護のルールに従い、そこに生息する植物や動物に敬意を払って行動すれば他人の土地であっても自由に森に入り、野生の花はもちろん、きのこやベリーを摘む事が許されています。
ただし土を掘り起こしたり、根こそぎ取ってしまうことはルール違反で罰せられます。
また植物の中でも絶滅の危機に瀕する種類は保護のため、摘むことは禁止されています。代表的な保護植物には、歌にも唄われ、春を象徴する花「Bråsippor(ブローシッポル)」があります。
この自然享受権は森に限らず、山や川、海など全ての自然に通用するもので、自然を大切にし、自然と共に生きているスウェーデン人の誇りでもあるのです。

Blåsipporの歌はこちらから聞くことができます。
http://youtu.be/_tRQVpEUZXA

写真:自然享受権Allemansrättenがあるから、自然のきのこや花は自由に摘んでもよい。

・・・・首都ストックホルムの森・・・・

2010年にヨーロッパの15都市のなかから、もっとも環境に配慮された都市として、ストックホルムが初代「ヨーロピアングリーンキャピトル」に選ばれました。
選ばれた理由のひとつは、森林など緑の多い地域から300メートル以内の環境に、住居の95%があるということでした。
私がストックホルムの空港に初めて着陸した時、街も見えず空港らしきものも見えないのに飛行機がどんどん降下していくので、「このまま森に不時着するの?」とドキドキしたのを覚えています。国土の70%以上を占める森林は、空から見ると一目瞭然、首都でさえ森の一部に溶け込んでいるのですから。
ストックホルムの都心から車で30分程の近郊には大きな森が10もあるそうです。
驚く事に、地下鉄中央駅からたった3つ目の駅にはLill-Jansskogen/リッルヤーンススコーゲンという森もあるんですよ。 この森には様々なアクティヴィティーが楽しめるエリアが数カ所あり、3kmのジョギングコースもあります。
都心にいても気軽に自然に接する事のできる環境は、日本人の私たちには贅沢なことだと感じるのですが、スウェーデンでは当然の権利なのだそうです。

写真:森の中のジョギングコース

・・・・北欧の森に住む妖精たち・・・・

スウェーデンの森をテーマにした童話や絵本には、必ずと言っていいほど、妖精が登場します。森は神秘的で、自然にははかり知れない力があるから、昔から多くの伝説が語りつがれてきたのでしょう。北欧では可愛い妖精よりも、どちらかというと不気味で奇妙な妖精が多く描かれています。
「トロル」はその代表で、もともとは巨人だったというだけあって、ちょっと恐い存在でもあります。スウェーデンで一番よく目にするのが、白いひげを蓄えた庭に住む小さな妖精「トムテ」です。赤い帽子を被った「ユールトムテ」はスウェーデン独自のサンタクロースとしても有名ですね。
また、1800年代後半の童話作家エルサ・ベスコフの世界には、ファンタジーあふれるスウェーデンの森が描かれていて、森のきのこや植物が可愛い妖精たちに姿を変えて登場します。
スウェーデンの森では、エルサ・ベスコフの絵本に出てくる、真っ赤な傘に白い水玉模様の「毒きのこの妖精」たちが、本当に遊んでいるような気さえします。

・・・・世界遺産「森の墓地」・・・・

ストックホルムの中央駅から地下鉄に乗って南に15分足らずの所に、世界遺産に指定された「森の墓地」があります。100ヘクタールにも及ぶ自然の地形を生かしてデザインされ、1940年に完成した森の中の墓地です。
世界コンペで勝ちぬいたスウェーデン人建築家、グンナル・アスプルンドとシグワード・レヴェレンツによって、敷地全体のデザインとその中に点在する5つの礼拝堂が設計されました。広大な森には、松林の間に建てられたお墓の他に、小高い丘や草原や池があり、起伏に富んだ地形は人生そのものを象徴しているかのようです。
森林を切り開いて自然を破壊するのではなく、自然を尊重し調和して作られた「森の墓地」は、自然を愛するスウェーデンらしい人生の終着点に思えます。
ここに来ると「森」は人が還って行く場所にふさわしいところなんだと妙に納得させられます。

見瀬理恵子(イラストレーター)

ライター:見瀬理恵子(イラストレーター)

大阪総合デザイナー学院ファッションデザイン科卒。ペーター佐藤、安西水丸、原田治、新谷雅弘氏に師事。デザイン事務所勤務を経て、フリーランス・イラストレーターとして仕事を始める。1995年ー2000年と2006年から7年間スウェーデンに在住し、娘二人の成人を期に2013年9月に帰国。

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